古典落語を聞いていると「酒」と「金」と「情」の話が多いのですが、
この季節になると決まって思い出す話があります・・・
うちの実家の立ち飲み屋は工場町のはずれにあり
バブルの頃まで、全国から流れついた「労働者」たちが集まる町で
当時はずいぶん活気に溢れておりました。
労働者の中には、身寄りのいない人や、田舎と縁を切って出てきた人
が多くいたのですが、当時の立ち飲み屋と言えば、町の情報拠点だった事もあり
ウチの親父がそんな人の身元引受人や緊急連絡先(電話をひいていない人もたくさんいた)になっていた様です。
独り身の人が多かったので、最近姿を見ないな、ちょっとお前見てきてくれ
と親父に言われて文化住宅に顔を覗かせると部屋で倒れて亡くなったりしており、さながら古典落語の「らくだ」の様でした。
ある日、実家を勘当された男の母親が亡くなったと、ウチに連絡がありました。
男は毎日ウチに飲みに来て僕たち兄弟と遊んでくれて家族のような間柄でした。
てめえを生んでくれた母親の最期くらい見届けてこい、と親父は金の無い男に
背広代や交通費を融通した様ですが、男は家族仲が悪く気まずかったのか実家には帰らず、葬式にも出なかった様です。金は賭博でスったらしいとも誰かが言っていました。
それから何年も男は姿を見せませんでした。
不義理をした事を気まずく思っていたのでしょうか。
僕が高校生になったある日、連絡がありました。
男が死んだらしい。と
親父が男の親族に連絡すると、縁を切った人間の葬式は出せん。
遺骨も引き取らん。とのことで親父がウチで引き取ろうと役所に言うと
親族以外は引き取れませんと言われたそうです。
何やら無縁仏(むえんぼとけ)と言うらしい、と。
久々に飲み仲間が集まって「手作りのお通夜」をする事になり
適当にテーブルを並べた上に写真を飾って、いつも飲んでいた
ワンカップ大関を供えました。
最初は少ししんみりしていましたが、次第に宴会のようになり
飲み仲間はゲラゲラ笑いながら昔話に花を咲かせました。
骨は拾えないが、焼場には行けるとの事でその後大勢で焼場に向かいました。
もくもくと煙を上げる煙突を見て親父が言いました。
「無縁仏やのに、煙があんなに出てるで。」
さっきまで泣いてた弟が少し笑いました。
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