コンサルの実例を見たい!ケーススタディ

ケース5 : 年商30億から年商1億へ。大幅業態転換を断行!

建設業K社の場合(大阪市 年商30億)

概要

業界不況と景気悪化で事態は悪化の一途…
「去年までは約5億の現預金残があったのですが...。」肩を落として、そう口にする社長。試算表を拝見すると今月末での現預金残は約2億。毎月の固定費が2000万円かかっており、
売上の目途が立っていない状況。10ヵ月(2億÷2000万円)で資金ショートを起こす事になります。近年建設業界は価格競争と原材料高のダブルパンチで利益率が著しく低下し、まさしく業界不況です。ある程度の資本力と安定した受注があり、固定費を賄える利益確保がされていないとすぐに資金繰りがひっ迫します。K社の場合、この業界不況を乗り越える戦略として近年、注文・請負建築だけでなく、自社が事業主となって行う戸建分譲事業と投資ファンド向け収益マンションデベロッパー事業に移行していました。
当初は順調に進んでいたこの事業ですが、1年ほどまえから地価が下がり始め、仕入れていた土地が割高なものとなりだしました。加えて、景気悪化による一般消費者の買い控えと不動産投資ファンド業界がサブプライムローンの影響でダメージを受けた事から、時代は「ものを作っても買ってもらえない」状況に向かいました。

この会社が抱える問題点

  • 工期に時間がかかる“不動産投資ファンド向け開発案件”で業界景気の先読みを誤った。
  • 予想以上の急激な景気悪化で固定費の支払いがままならなくなった。
    (拡大路線で固定費は増加させてばかりいた。)
  • 商品在庫物件の販売価格を見誤った。

解決策

「現状把握」のないまま「対策方法」を練っても「ヌカに釘」!【現状把握】→【目標設定】→【実行】の3ステップで再生の道を模索!

【1.現状把握】
(A)「財務・資産デューデリジェンス(※)」確認 (商品物件・固定資産の時価調査)
(B)「予定資金繰り表」を作成 (資金繰り把握。余裕資金、タイムリミット確認)
商品在庫の販売予定価格がかなり甘め(高い金額)に設定されていたことが発覚。
手持ちの8物件を売却した際に約1億円の損失が発生する事が明らかに。
予定資金繰り表を作成すると、当初見積もりより早く約6ヵ月先には資金ショートを起こすことが判明.。
【2.目標設定】
(C)今後の会社の方針・目標の設定
(D)具体的対策の設定
「会社規模の縮小、業態転換」を決定。具体的な「対策」として下記6点を設定。
  • 不動産市況が更に悪くなるとみて、多少損失が増えても商品物件の早期売却を優先
  • 主力事業の戸建分譲・収益マンションデベロッパー事業の両方の新規事業を停止
  • 売上は極端に低下するがリスクの低い「リフォーム事業」に事業転換
  • 事業転換に伴い固定費を大幅削減。「リフォーム売上」のみで固定費を賄える体制をとる
  • 固定費削減に伴い大幅リストラを断行。役員・従業員ミニマム3人で回る事業体制を構築
  • キャッシュポジションを高めるために固定資産(本社ビル等)、の売却を行う
【3. 実行 】
(E)具体的対策の実行 (F)進捗の確認・点検・評価 (G)改善・処置
目標設定に向かい会社代表者が指揮をとり動きだす。
頻繁に打ち合わせを行い進捗を確認。改善点、変更点があれば都度対応。

その結果

ノンバンクから運転資金4000万円調達!

社長さんからの声

1年前までは売上も利益も右肩上がりで業績は順調だと思っていました。しかし、この1年間で一気に市況が変わり、安いと思って仕入れた物件がことごとく高買いしていた事、売れるだろうと思っていた価格設定が到底売れない価格にまでトレンドが変化していました。スタードッグスの前田氏に手伝って頂き、財務・資産デューデリジェンスと予定資金繰表を作成し、毎週ミーティングを重ねた事で現状を正確に把握できたと思います。もし以前の業態のままで事業継続していたら、毎月の資金流出を賄う為に無理な資金調達を行い、最終的には債務超過状態になり企業として再スタートできる事はなかったと思います。

スタードックスからコメント

今まで築き上げた会社の規模を大幅に縮小させたり、事業内容を大きく転換させる事は経営者にとって非常に勇気のいる事です。しかし、自社の業界の動向が法改正や市況によって大きく変貌する可能性がある場合、これらの「決断」のスピードは会社の存亡を左右します。
「決断」を下すときに必要になるのが「現状把握」です。今までは「商品在庫のデューデリジェンス」も「予定資金繰表」も正確に第三者の意見を聞いてつくられていなかったK社は「現状把握」ができていなかったといえます。「現状把握」ができていない状態で社長が「対策方法」にあれこれ頭を捻っても正直「ヌカに釘」状態です。
弊社がコンサルティングに入る場合は、まずこの「現状を把握する事」から入ります。今回のケーススタディでスタードッグスが行った一連の作業を再度簡潔にまとめました。参考にしてみて下さい。

ここがポイント!:【現状把握】→【目標設定】→【実行】の3ステップ!

【1.現状把握】
(A)財務・資産デューデリジェンス...商品物件・固定資産の時価調査。
(B)予定資金繰り表を作成...資金繰りの把握。余裕資金、タイムリミットの確認。
【2.目標設定】
(C)今後の会社の方針・目標を決定。...今回は「会社規模を縮小して業態転換する」と決定
(D)具体的対策を決定...固定費削減・銀行への返済計画など詳しく決定。
【3.実行】
(E)具体的対策の実行...会社代表者が指揮をとり動きだす。
(F)進捗の確認・点検・評価...まめに打ち合わせを行い進捗を確認。
(G)改善・処置...改善点、変更点があれば都度対応。

いかがでしょうか。営業ではありませんが、こういう作業は代表者だけでは非常に困難です。
コンサルを入れろ、とは言いませんが、ヒアリング能力やコーチング能力の長けた人物が不可欠だと思います。
余談ですが、スタードッグスも週一回、会社の経営会議に外部コーチングコンサルタントを招へいしています。

(※):「デューデリジェンス(Due Diligence)」=企業買収や不動産投資を行う際に投資する価値があるのかを判断するため、事前に資産価値や収益力を詳細に調査する事を指す。元々は法律用語らしいが今日では金融業界や不動産業界でも頻繁に使われる言葉。口頭で「デューデリ」などと略称する事が多く、文章では「D.D」と略したりする。